9月8日に栃木県壬生町の愛宕塚古墳の現地説明会に参加しました。壬生町では2014年から車塚古墳、牛塚古墳、愛宕塚古墳の発掘調査を5年計画で実施していました。今年が最終年度で昨年に引き続き愛宕塚古墳の調査を実施しました。愛宕塚は古墳時代後期の6世紀後半に築造された前方後円墳で、車塚古墳、牛塚古墳に先行して造られました。
南から。愛宕神社の鳥居。
南から。前方部に愛宕神社を祀る。
今回の調査で墳丘の全長は82mに拡大することが判明。今回の調査でも主体部を示す兆候は発見されず。
前方部の南側から後円部。
前方部の西側の周溝。
現地説明会の参加者。10時と12時の2回の開催で10時の部は140人。
愛宕神社の参道の石段の東側に設定された第3トレンチ。墳丘第2段に貼られた葺石。斜面の角度、石の大きさが途中で変化する。下の石は小さく、上は大きい。墳丘上部は葺石の残りが悪い。葺石の手前は墳丘第1段の平坦面(基壇)。基壇が広いのがこの地域の特徴。
後円部の南側に設定された第5トレンチ。墳丘第2段に貼られた葺石と基壇の端に円筒埴輪の基部が検出された。
円筒埴輪は基壇に直に設置されておらず汚れた土を盛った上に設置されていた。これをどう解釈するか。研究者を悩ます。
後円部の東側の主軸に設定された第4トレンチ。こちらでも墳丘第2段に貼られた葺石が検出された。
後円部の北側に設定された第6トレンチ。木の根の向こう側に円筒埴輪が検出されている。
円筒埴輪列。
後円部の北側の周堤に設定された第8トレンチ。基部が残っているのが円筒埴輪で、その右の線で囲まれた部分で盾持ち人物埴輪が検出された。
北側の周溝と周堤に設定された第6トレンチ。周堤で円筒埴輪が検出された。
円筒埴輪の中心にトレンチの断面があるので、円筒埴輪の内部に充填された土の状態が観察できる。
北側の周堤に設定された第7トレンチ。奥から2番目は盾持ち人物埴輪、他の3つは円筒埴輪。
前方部の西側の周堤の外に設定された第1西トレンチ。黒い部分が二重目の周溝。これによって二重目の周溝は全周していると推定される。
西の道路から。第一西トレンチの黄色いテープが見える。
前方部の南側の周堤に設定された第9トレンチ。盾持ち人物埴輪が検出された。
今回の調査で検出された埴輪片。器財埴輪が検出された。
愛宕塚古墳から出土した埴輪。
今回の調査で、墳丘及び周堤を三重に巡る埴輪列(墳頂、基壇、周堤)、墳丘二段部を覆う葺石、周堤の外側に掘られた二重目の周溝の存在が確認された。
盾持ち人物埴輪は調査地点5ヶ所から検出。この埴輪は県内では小山市内の桑57号墳と飯塚35号墳、下野市内の甲塚(かぶとづか)古墳でしか確認されていない。
文献
[1] 東京新聞編集局 1993「古墳を歩く」
[2] 壬生町教育委員会 2005 『壬生町埋蔵文化財調査報告書20:国指定史跡 愛宕塚古墳』壬生町教育委員会
[3] 壬生町教育委員会 2019 パンフレット『みぶの古墳 -「羽生田地区の古墳群」と「壬生地区の古墳群」- 』第5版