週末は古墳巡り

古墳とは、およそ3世紀から7世紀に築かれた墳丘状の墓のこと。その数、およそ20万基。

半導体有事 湯之上隆

文春新書「半導体有事」を読了。筆者はジャーナリストの湯之上隆さん。2023年4月発行。帯には「米中戦争の引き金になる!」「日本は再び失敗を繰り返すのか?」とセンセーショナルな煽りが並ぶ。まだ、記憶に新しい2021年に世界的な半導体不足により自動車の製造ラインが止まるなど社会問題となり、突然、世間が「半導体」に注目するようになった。日本では、台湾のTMSCの工場(28nm/22nm)を熊本に誘致、新会社「ラピダス」を設立して北海道で2nmの先端半導体の量産を目指すなど、にわかに半導体ブームが起きている。本書は、1章で米国が2022年10月に発表した対中輸出規制、その背景として2020年にTSMCが発表した米アリゾナ進出(5nm、月産2万枚、120億ドル→4nm/3nm、月産5.5万枚、400億ドル)と中国ファーウェイへの半導体輸出停止、2022年8月のCHIPS法成立(527億ドルの補助金)を解説。2章で半導体の主に製造技術、微細化、テクノロジーノード、最先端の露光技術EUV(極端紫外線)を解説。EUVはオランダASMLが2016年に量産機をリリース、1台約200億円、TSMCサムスンが2019年に7nm+/7nmに量産適用、インテルはEUVを初めて量産適用するインテル4の立ち上げに苦戦している。3章で受託生産(ファンドリー)の半導体メーカーTSMCの創業(1987年、創業者:モリス・チャン)から現在(2023年)までを振り返る。設計専門の半導体メーカー(ファブレス)の誕生(1990年代初頭、米西海岸シリコンバレー)、日本の垂直統合型の半導体メーカーとの差、水平分業と世界標準化、エコシステム。4章で車載用半導体不足を解説。先端半導体、28nmロジック半導体MCU、パワー&アナログ半導体。5章で世界的に過熱する半導体メーカーの投資競争を解説、過剰投資よる価格暴落と半導体不況の到来を警告する。6章で2021年6月に衆議院「科学技術・イノベーション推進特別委員会」で筆者が参考人として意見陳述した意見を紹介。1980年代に世界を制した日本のDRAM産業が1990年代に韓国に敗れ凋落した理由(過剰品質、コスト高、イノベーションのジレンマ、マスク数)、日本は競争力のある製造装置や材料をより強くするべき。筆者は、日本政府の補助金の対象となっているTSMC熊本工場、マイクロン広島工場、キオクシア四日市工場・北上工場の日本の半導体シェアへの貢献度が限定的であることを示し、経産省半導体戦略、半導体政策の自己矛盾を指摘。また、半導体不足解消によりTSMC熊本工場で閑古鳥が鳴く可能性、半導体前工程の工場誘致だけでは経済安全保障は担保できないことを説く。また、新会社「ラピダス」に対して、40nmで停滞したままの日本のロジック半導体製造から途中をすっ飛ばしていきなり2nmの量産を目指す無謀さ、前工程の技術者確保(千数百人規模)の困難さ、EUV入手と技術者確保、量産立ち上げの困難さ(HighNAの壁を含む)、ファンドリービジネスに必要な生産受託者の不在と、実現性に疑問を呈す。また、ラピダス社長の小池氏が、日立の武蔵工場在籍時の2000年に立ち上げた超短TAT(Turn Around Time)の量産工場「トレセンティテクノロジーズ」が大失敗に終わった経緯を説明(12インチ、全ての装置を枚葉化、13枚1ロットの7000枚✖️3ラインを構築、2ロット(26枚)を30日で処理を実現、合弁(予定)相手の台湾ファンドリーUMCと経営権を巡り破談、閑古鳥が鳴く状態、多品種少量生産ラインでフラッシュメモリを生産して大混乱)。小池氏は、その後、サンディスク社長、ウエスタンデジタルジャパン社長兼ウエスタンデジタル本社の上級副社長を歴任。筆者は小池氏が「トレセンティの失敗をラピダスで晴らす」と考えているように思えてならない、ラピダスがトレセンティの二の舞になるとしか考えられず、ラピダスがトレセンティのデジャブのように感じられるとする。7章で日本のシェアが高い半導体製造装置と材料を分析して、日本人の真面目で忍耐強く、細部までこだわる特質が活きる最適化する変数が多い液体や流体、粉体を扱う工程の装置、材料で強く、欧米人はマーケティングでニーズをつかみ、サイエンスのもと強力なリーダーのトップダウンでアーキテクト(全体設計)する。またモジュール化、シミュレーションの活用、ソフトウエア化して、世界標準の装置を仕上げる、これらは、日本人と欧米人の発想や行動様式の違いに起因するとする。また、半導体製造装置における日本のシェアの低下を指摘して、日本人の特徴は活かしつつ、欧米型の良いところを取り入れる努力の必要性を説く。最後の8章で半導体が日常生活で不可欠なこと、ロシアのウクライナ侵攻で顕在化したリスクとして、半導体に不可欠な一部の希ガス(Ne,Ar,Kr,Xe,C4F6)をロシアとウクライナの工場で生産していること、さらに3Mのポリフルオロアルキル物質(PFAS)の製造から撤退すること等、世界が協力して取り組むべき課題を提示して、半導体の世界市場が筆者の予測を超えて成長し続けることを願うと結ぶ。

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国立科学博物館の展示(シリコンインゴット、コンピュータ素子の移り変わり、サイバーボード)
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