今年のどこにも出かけなかったゴールデンウィークに「世界最古の釣針」の発見者、国立科学博物館の藤田裕樹さんの講演会のYouTubeライブで、「残念だけど港川人は我々の祖先には直接繋がらない」と聞き、そうなんだと思ったのも束の間、ネットニュース(日本人の祖先は「港川人」? 旧石器時代、DNAで解析(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース)で、「港川人が、現代の日本人に遺伝的に直接つながる祖先だった可能性がDNA解析からわかった」と報じられて驚いた。記事読むとDNA 解析はゲノムではなくミトコンドリアDNAの解析で、なんかモヤっとしていたら、東京大学総合研究博物館の海部陽介さんがTwitterで解説してくれた。「まず沖縄の骨は有機質の保存が悪く、DNAの抽出は絶望視されてきましたが、それを覆した執念が素晴らしい。」なるほど。別のネットニュース(旧石器時代の「港川人」、現代日本人と直接つながらず…DNA分析「ルーツ論争」に一石(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース)だと「国立科学博物館の篠田謙一館長(分子人類学)の話」として「(略)港川人の子孫は現代日本列島人には見当たらず、祖先ではないという結論になる」と報じている。海部さん曰く「研究者のコメントも刈り取られていて不正確になった印象。正しく伝えるのは難しい。」なるほど。ニースの元になった論文は、
藤田さんのYouTubeライブについては、
日本の旧石器人骨のDNA抽出初成功に祝意!しかしこの報道は誤解を招きます。データは #港川人 が広い意味で東アジア集団の祖型とみなせることを示していますが(その隠れた意味は別途ツイートします)、現代日本人の直接の祖先かはわからず論文で深く議論されていません。https://t.co/DkZFVAk75e
— 海部 陽介 (@yosukekaifu) 2021年6月13日
自分も港川人にはいろいろ関わってきたので、この機会にいくつかの観点を発信します。まず沖縄の骨は有機質の保存が悪く、DNAの抽出は絶望視されてきましたが、それを覆した執念が素晴らしい。著者の水野さんらはそのために様々独自の工夫をしてきたようです。https://t.co/F1NYpyq4x4
— 海部 陽介 (@yosukekaifu) 2021年6月14日
1970年代に #港川人 の化石を発見したのは、地元の実業家大山さん。化石の出る採石場に通い続けて、陽の目を見ました。大山氏がいなかったら、人骨はブルドーザーで破壊されていたはず。https://t.co/PeltzxwPUk
— 海部 陽介 (@yosukekaifu) 2021年6月14日
今度は真逆の記事ですが、「港川1号のmtDNAの系譜は現代人に受け継がれていないかもしれない」と「港川人が絶滅した」とは別次元の話。後者は核DNAを調べないとわかりません。研究者のコメントも刈り取られていて不正確になった印象。正しく伝えるのは難しい。https://t.co/uhecYdtf2L
— 海部 陽介 (@yosukekaifu) 2021年6月14日
どうしても #港川人 と我々の関係に議論が偏ってしまうようだけど、自分として興味深いのは、古い系統のmtDNAを保持しているのは、沖縄へ古い時期に渡った集団が長期間存続していたと読めそうなこと。「技術の乏しい旧石器人は小さな島で存続できなかった」という仮説の反証になるかも。
— 海部 陽介 (@yosukekaifu) 2021年6月14日
ところで今回なぜこれほど #港川人 に反応するかというと、自分も研究論文を出しているだけでなく、所属先の東京大学総合研究博物館がその実物化石を保管しているためです。こちらは港川1号(手前)とフローレス原人(奥:模型)の夢のツーショット。今、これらの解説動画を計画中です。 pic.twitter.com/W5daAvlMyQ
— 海部 陽介 (@yosukekaifu) 2021年6月14日