昨年10月に飛鳥山博物館でもらった北区飛鳥山博物館研究報告第1号(1999年)に掲載されていた文献[1]で、1899年(明治32年)に田端駅構内から産出したナウマンゾウ化石について知った。そこで思い出したのが2017年夏に訪れた東京大学総合研究博物館のUMUTコレクションボックスで展示されていた「徳永重康のナウマンゾウ牙化石/東京都北区田端駅構内産出(第四期更新世)」のこと。文献[1]によれば、日本の長鼻類化石を初めて研究したのはドイツから招かれて東京大学の初代地質学教授を務めたエドモンド・ナウマンで、神奈川県横須賀市白仙山と東京都中央区江戸橋で産出したゾウ化石(臼歯)をインド産のナルバダゾウに同定して報告した。当時はインドのナルバダゾウかヨーロッパのアンティクースゾウしか知られておらず、臼歯だけでは区別できなかった。1971年春、千葉県香取郡の猿山の露頭からほぼ完全な頭の化石が産出し、ナウマンゾウがナルバダゾウやアンティクースゾウとも異なる種で、アジアゾウともアフリカゾウとも別系統であることが明らかになった。
文献[1]の徳永記載の論文(1906)の訳文によると、「この興味深い哺乳類化石は1898年に田端の青色粘土の下部から掘り出された。標本は2点の臼歯と1本の素晴らしい牙からなる。これらは今東京帝国大学にある。」とのこと。田端駅が開業したのが1896年。1898年に田端駅構内の崖を削って役宅を造成した際に牙が見つかり、徳永が翌年にかけて調査して臼歯2点を発見したようだ。飛鳥山博物館にも田端のナウマンゾウの牙と臼歯が展示されていたように思うがレプリカだったかな(自信なし)。
文献
[1] 犬塚則久 1999「ナウマンゾウの研究と田端標本再考」『北区飛鳥山博物館研究報告』第1号 東京都北区教育委員会
ナウマン博士が描いた地質図@フォッサマグナミュージアム…明治の日本にやってきてこれだけの地質図が描けたなんて信じられん! pic.twitter.com/VitH6lQckF
— Shoji Nishimoto (@aichi_granite) 2021年10月5日
当館館長がまとめた「ナウマンゾウ研究百年」が、琵琶湖博物館研究調査報告 35号として出版されました。本報告は一般販売はありませんが、琵琶湖博物館のwebページのほか、J-STAGEでも公開しています。https://t.co/QFIkTVZIg6https://t.co/RXIBAC0LER
— Satoguchi, Y. (@SatoguchiY) 2022年12月22日