以前、本グログで、古墳数の都道府県ランキングに対する疑問についてコラム記事を書いた。
権威のありそうなところから数字が発表されると、それを無批判に比較して議論を展開することが見受けられる。最近、気になる例として、都道府県が発表する新型コロナ感染症に関するPCR検査数の比較について紹介する。東京都の発表するPCR検査数に関しては、おじまさんのツイートがわかりやすい。
新規感染者が減ってきたとともに「検査が少ない。減らしているのではないか」という人が増えてきたので、あらためて整理しておきます。結論から言うと、検査を意図的に減らすことは出来ません。検査は検査需要に基づいて行っているからです。まず、都が行う検査は2種類あることから解説していきます。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年6月4日
1つ目は行政検査です。医療機関や保健所の判断で、症状がある人や濃厚接触者に対して行われます。意図的に増やす・減らすことは出来ません。多いときでは16,000件/日、現在は9,000件/日ほどですが「検査が減ったから感染者が減った」のではなく「感染者が減ったから検査が減った」と理解してください。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年6月4日
2つ目は独自検査です。リスクの高い集団・施設(病院、高齢者・障害者施設、繁華街、駅前、大学など)におけるクラスターを予防するために行うもので、無症状者が対象です。これは意図的に増やすことが出来るし、実際に増やしています。現在は9,000件/日ほど行っており、さらに拡大していく予定です。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年6月4日
この2つを合わせると都は現在18,000件/日ほど検査を行っていることになりますが、行政検査と独自検査は性質が全く違うため合算していません。仮に独自検査を検査数に加えてしまうと陽性率が非常に低く出てしまい、感染状況がわかりにくくなるため。大阪はこれを加えていますが、昨日の陽性率は2%です。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年6月4日
なお、独自検査についても毎日、検査数を発表しています。リアルタイムで把握することが難しいので積み上げ方式ですが。5月第4週は高齢者施設670ヶ所、障害者施設111ヶ所、医療機関59ヶ所などで計61,773件の検査を行いました。詳細はこちらからもご覧いただくことができます。https://t.co/pjcTjvlTZn pic.twitter.com/iMC5FTjgh8
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年6月4日
上記には民間検査は含まれていない。4月20日と4月25日のツイートも。
東京都では、
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年4月20日
①高齢者施設、障がい者施設、医療機関のスクリーニング検査
②退院時の陰性確認検査
③民間企業が行う自費検査
はカウントしていません。リアルタイムで把握しにくいのと、把握できたとしても分母に適さないという考え方から。ちなみに、よく比較される大阪府は①もカウントしています。 https://t.co/UYqklE8GPF
大阪府、②もカウントしているようです。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年4月20日
東京の検査数が大阪より少ない理由。東京では
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年4月25日
①高齢者施設、障がい者施設、医療機関で行う集中的検査
②退院時に行う陰性確認検査
③民間企業が行う自費検査
をカウントしていません。リアルタイムで把握しにくいのと、把握できたとしても分母として適切でないため。大阪は①②をカウントしています。
①②③とも陽性者は新規感染者数にカウントしていますが、検査数については陽性率に与える影響もあり、分母には含めるべきでないという判断です。実際には①だけで月に11万件の検査を行っています(この後、週一に増やします)。②は最近少ないようですが、これらを合わせると東京の方が多くなります。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) 2021年4月25日
一応、東京都のホームページで裏どりすると。
都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
モニタリング項目(4)検査の陽性率
2020年5月7日以降は(1)東京都健康安全研究センター、(2)PCRセンター(地域外来・検査センター)、(3)医療機関での保険適用検査実績により算出。2020年4月10日~2020年5月6日は(3)が含まれず(1)(2)のみ、2020年4月9日以前は(2)(3)が含まれず(1)のみのデータ2020年5月13日から2020年6月16日までに行われた抗原検査については、結果が陰性の場合、PCR検査での確定検査が必要であったため、検査件数の二重計上を避けるため、陽性判明数のみ計上。2020年6月17日以降に行われた抗原検査については、陽性判明数、陰性判明数の両方を計上陰性確認のために行った検査の実施人数は含まない
大阪府のホームページも調べたが陽性率の母数の検査数にどの検査が含まれているかの情報は見つけられず。代わりに朝日新聞のネット記事を貼っておく。
陽性率の計算、地域でバラバラ…専門家「正確にすべき」 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
大阪府は昨年4月の頃から民間検査を含む検査数を公表していたようだ。
PCR検査「陽性率」出せず 阻む2つの壁|日テレNEWS24
これらを理解せずに、東京都の日曜日の検査数と大阪府の平日の検査数を比較て桁が違うような誤解を誘う記事も貼っておく。こういう記事の見出しにまんまと踊らされるのは避けたい。